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2007.05.26 (土)

「 米中の力のバランスが中国に傾けば? 台湾問題はドミノ倒しの最初の1枚 」

『週刊ダイヤモンド』     2007年5月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 691

「産経新聞」(5月16日付)は、「中国、米空母攻撃ミサイル開発へ」との野口裕之記者の記事を一面に掲載した。

中国軍が米空母攻撃能力を高めるため、射程1,500~2,500キロメートルの準中距離弾道ミサイル「東風21」の改良に着手したこと、核弾頭搭載が可能な東風21はすでに100基近く配備されていること、これらに赤外線探知装置を取り付けることで、米空母の攻撃が可能になることなどが報じられている。

ちなみに、今年1月、中国が地上850キロメートルの軌道上の衛星攻撃実験に使用したミサイルは、東風21の改良型である。「産経」の報道は、あらためて、中国問題は台湾問題に尽き、中国の世界制覇の戦略のとば口が台湾併合で、そのために中国はその国力を最優先で投入し続ける、と警告しているのだ。

台湾が中国の支配下に入った場合、米国の影響力の低下と日本の孤立は避けられない。台湾制圧のためには、米軍の介入を許さないことが大前提となる。米海軍力は空母を中軸として形成されているが、中国には米空母に真正面から挑む力は、まだない。が、中国海軍の原子力潜水艦は昨年10月、沖縄海域で訓練中の米空母8キロメートル地点まで、気づかれることなく接近していた。攻撃されれば、米空母は確実に深刻な打撃を受ける至近距離である。

また、今年1月に中国が成功した衛星攻撃実験は、いまや中国は衛星の破壊によって米軍の通信能力を一瞬にして奪い去ることも可能なのだと見せつけた。通信能力が破壊されれば、米軍の作戦遂行能力は致命的に落ちる。

加えて、今回の報道にある米空母攻撃ミサイルの開発である。胡錦濤、温家宝体制の中国は、昨年来、日本のみならず世界に向けて微笑外交に転換した。その裏で、対米攻撃能力を着実に高め続けているのである。

中国共産党政権は、国家の基本は軍事力にあると考えてやまない。国際政治は、理念や理想よりも軍事力で左右されると彼らは固く信じ、建国以来、軍事大国化を国是としてきた。

この中国に、米国が敗れることはあるのか。つまり、米国が台湾を守り切れないケースはありうるのか。私は、今の米国なら、小さいながらもその可能性はあると考える。理由は、米国政府に中国への遠慮が生じているからだ。

イラク、イラン問題を抱えるブッシュ政権は北朝鮮問題で妥協を重ねつつある。朝鮮半島のコントロールを委ねることで、すでに中国に半歩譲り、台湾で相殺する動きさえある。

もう一つの理由は、米国の「希望的観測による読み誤り」だ。米国には、民主党を中心に中国への根拠なき憧れが常に存在する。親近感ゆえに、実態を見詰める目が曇ってしまうのだ。たとえば衛星攻撃実験だ。米国には、あの実験を脅威としてよりは、中国政府と軍部のあいだの意思疎通の欠如の結果だと受け止める人びとが少なからず存在する。彼らは、中国政府が軍部の動きを事前に知っていれば、止めたであろうと考える。中国人は笑っていることだろう。彼らは、昨年は少なくとも二度、同様の実験を行った。その結果、今年1月、ようやく成功したのだ。中国政府が実験の日時はともかく、大方針として同計画を知らないことは、断じてありえない。

このような状況では、中国が全力で米海軍の動きを抑え、米軍の楽観主義、親中姿勢の間隙を突いて、台湾を制圧することは十分考えられる。動きを封じられた米国は、日本にとっても、もはや万全の守りではありえない。アジア海域での米中の力のバランスが中国有利に変化すれば、アジア諸国は日本とは距離を置かざるをえない。そのとき、日本はどうする。

台湾問題はいわば、ドミノ倒しの最初の1枚となる。ドミノ倒しを防ぐために日本が今すべきことは、日本もまた、軍事力の意味を見据えてその整備に力を入れることだ。

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